TWILIGHT SLIDER
自分が受けたいじめよりも、暴力よりもつらい。

身を引き裂かれるとかそんな優しい表現じゃない。

もっと痛くて、どうしようもないくらいにつらいものである。

「大村さん!」

その声に振りかえると、息を切らした夕夜が自分の前に立っていた。

彼のその姿に、華は目をそらすようにうつむいた。

「何かあったんだろう?」

夕夜の声がそう聞いてくるが、華はうつむいたまま首を横に振った。

2人の間を沈黙が流れた。

「――ってよ…」

夕夜の呟くような小さな声に、華は顔をあげて驚いた。

何故なら、夕夜が泣いていたからだ。

「――桜木先輩…?」

華は呟くように、夕夜の名前を呼んだ。

「――俺を、頼ってよ…」

夕夜が涙を流して、泣いている。
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