TWILIGHT SLIDER
華は胸を締めつけられるような感覚を覚えた。

離れていても、夕夜は常に自分のことを考えてくれている。

どんなに避けていても、夕夜は常に自分のことを思ってくれている。

こんなにも自分を思ってくれる人は、初めてだった。

追いかけてまで、涙を流してまで、自分を1番に考えてくれている。

夕夜は、まさにそのタイプの人間だった。

「――桜木先輩…」

華は夕夜の名前を呼んだ。

「――私…」


講義はすでに終わっていたが、夕夜は講義室に足を踏み入れた。

「夕夜!」

綾乃が夕夜の姿に気づいて歩み寄ってきた。

「急にどこかへ行くからビックリしちゃったじゃない。

今日の講義のノート、ちゃんと書いたから…」

話をしている綾乃に対し、夕夜は黙っていた。

「夕夜?」

彼の様子に声をかけたら、
「――綾乃」

小さな声で、夕夜が名前を呼んだ。

「――別れてくれないか?」
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