TWILIGHT SLIDER
その様子を、綾乃は古びたアパートの窓から見つめていた。

幸せそうなその光景に、綾乃は涙が出そうになった。

女の子と少し前の自分の姿が重なった。

父親も母親も、あんな風に困ったような、それでいて嬉しいような笑顔を見せていた。

「お父さん…お母さん…」

そう呟いた綾乃の目から、涙がこぼれ落ちた。

どうして、自分はこんな目にあっているのだろう?

どうして、母親から暴力を受けなきゃいけないのだろう?

自分が嫌いだから?

自分は愛されていないから?

もしそうだったら、自分は“生まれてこなきゃよかった存在”なのかも知れない。

愛されていない存在なのかも知れないと、綾乃は思った。


中学に進学したある日、母親がいなくなった。

いつも家にいた母親が出て行ってしまった。
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