TWILIGHT SLIDER
自分は誰からも愛されていなかった。

嫌われた、生まれてこなきゃよかった人間だった。

生きてはいけない存在だった。


そんな考えが一変したのは、高校に入学してからだった。

期待と不安でいっぱいのまま入学式を終えて、廊下を歩いていた時だった。

「なあ、かわいくね?」

後ろにいた男子がそう言った。

どうせ、誰かのことだろう。

そう思いながら、話を聞き流そうとした時だった。

「ねえねえ、名前なんて言うの?」

いきなり声をかけられたので振り返ると、男子が微笑んでいた。

「――三宅、綾乃です…」

話しかけられたことに戸惑いながら、綾乃は言った。

「三宅さんね、覚えておくよ」

爽やかに笑いながら、男子が言った。
< 140 / 202 >

この作品をシェア

pagetop