TWILIGHT SLIDER

├失くした笑顔

八神は深呼吸をした。

中の空気を忘れるように、外の空気をいっぱい吸った。

2週間、警察署で取り調べを受けていた。

今回の騒動と華の躰の傷について警察から何度も取り調べを受けたのだ。

彼女の躰についたたくさんの傷とアザ、そして今回の騒動を不審に思った警察が思った行動だった。

――ケガ人が出てるんだぞ!

これでもかと言うくらいに声を荒げて、刑事は怒鳴っていた。

ケガ人と言うのは、あの男のことである。

華を守ろうとしたあの男の顔を八神は思い出した。

――先輩!

華の泣きながら叫ぶ声が聞こえた。

彼女に“先輩”と呼ばれた男は、自分が振りあげた椅子に背中を打ちつけた。

華を守るように、自分を犠牲にしたのだ。

幸い、命に別状はなかった。

けれど、不審に思った警察が八神に取り調べを依頼した。
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