TWILIGHT SLIDER
「もう、そんなに買う必要ないじゃない」

華の声が聞こえて、八神は辺りを見回した。

(――あっ…)

笑顔の華がそこにいた。

「2人分だし、これくらい買わなきゃ」

華の隣には、両手にスーパーマーケットの袋を持った男がいた。

男は、あの時に華を守ろうとしていた“先輩”だった。

「それにしても、買い過ぎだよー。

私、そんなに食べれないよ?」

困ったように笑いながら、華は男と会話をしていた。

「大丈夫、華が食べられなかったら俺が食べるから」

「もう、夕夜ったらー」

声をあげて笑い出した華につられるように、“夕夜”と呼ばれた男も一緒に笑った。

誰から見ても幸せな光景だった。

八神はその光景を突っ立ったまま、黙って見つめていた。
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