TWILIGHT SLIDER
時計が夜の8時を過ぎた頃、八神は自宅のドアを開けた。

リビングに電気がついていることに気づいた八神は、靴を脱いでそちらの方に足を向かわせた。

「華?」

名前を呼んでリビングに顔を出すと、フローリングのうえに華が座っていた。

彼女の横に視線を向けると、キャリーバッグとボストンバッグが置いてあった。

「おかえり」

八神の顔を見ると、華が言った。

「その荷物、どうした?」

そう聞いた八神に、
「――私、出て行くことにしたの」

華が答えた。

「好きな人ができたの」

華がそう言ったとたん、鈍器で頭を殴られたような衝撃が八神を襲った。

「その人と一緒に生きて行きたいの。

隆一のことは、もちろん感謝してるよ?

助けてくれたし、優しくしてくれたし…でも私は本当に好きな人と一緒にいたいの、だから…」

「――“だから”、何だよ?」
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