TWILIGHT SLIDER
その沈黙を破ったのは、
「――大村さんの彼氏さん、自殺したんだって?」

ポツリと、綾乃がそんなことを言った。

「知ってるの?」

そう聞いた夕夜に、
「少しだけね」

綾乃はそう言って微笑んだ。

「八神さん、苦しんでたんだ」

夕夜は言った。

「苦しんでた?」

訳がわからないと言うように聞き返した綾乃に、
「うん、苦しんでた」

夕夜は答えた。

「だから…俺は八神さんが苦しんでた分、華を愛すことにする。

それが、今の俺にできることだと思うから」

そう言った夕夜に、
「そうね、夕夜にできることは大村さんを精いっぱい愛すことだもん。

夕夜ならできるよ」

綾乃が優しく微笑んだ。

「夕夜」

その声に振り返ると、華がこちらに向かってやってくるところだった。
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