TWILIGHT SLIDER
桜の木に背中を預けたその瞬間、夕夜は目の前の光景に目を奪われた。

何故なら…自分しか知らない場所に、自分以外の人物がいたからだ。

そして、その人物は…美しい少女だった。

少女は夕夜に気づいていないと言うように、目の前の桜を見つめていた。

黒髪のショートカット、白い肌、黒目がちの大きな瞳、紅い唇と、夕夜は観察するように少女をジッと見つめた。

小柄な身長に、華奢な躰、黒いワンピースから伸びる細い手足――全てが全て美しくて、夕夜は見つめた。

知らずに触れてしまうと壊れて消えてしまいそうな、美しいけど脆くて儚い――言葉でどう表現したらいいのかわからないけど、彼女はそんな雰囲気を持っていた。

例えるとするなら、少しの風でも散って行く桜のようだと夕夜は思った。

そのまま見つめていたら、少女と視線が重なった。

その瞬間、ドキン…と夕夜の胸が鳴った。

突然視線が重なって戸惑う夕夜に、少女は優しく微笑みかけてきた。

夕夜の胸が、またドキン…と鳴った。
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