TWILIGHT SLIDER

├無名の手紙

最近の夕夜の様子がおかしいと、綾乃は思っていた。

ぼんやりとして人の話を聞いていないのはいつものことだけど、ここのところはそのぼんやりがひどいように思えた。

(夕夜の1番は、私だもん)

そう言い聞かせることで、綾乃はいつも自分を落ち着かせていた。

夕夜は自分を愛してる。

世界中の誰よりも、自分を愛してる。

だから、自分は夕夜の1番だ。

その瞬間、頭の中がフラッシュバックし始めた。

――この悪魔!

(――やめて!)

綾乃は必死で頭の中の記憶を消した。

今は違う、ちゃんと愛してくれる人がいるからだ。

世界中の誰よりも自分を愛してくれる人がいる。

そう言い聞かせて、綾乃は記憶を抹消した。

それから携帯電話を取り出すと、綾乃はある人物に電話をかけた。
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