TWILIGHT SLIDER
母親が馬乗りになった父親に殴られている。

そんな痛々しい光景に、幼い華は小さな部屋の隅で震えて見ていた。

――やめて!

声を出したくても怖くて出すことができない。

母親は父親が殴られるたびにうめき声を出して、耐えているだけだ。

母親を助けたくても、自分は何もできない。

華はこの時間が早く終わることを心の底から願った。

この時間が終わったら、父親は外に出て行くのだ。


父親は、もういなかった。

華は動かない母親に歩み寄ると、声をかけた。

「――お母さん…?」

華の声に、母親の眉がピクリと動いた。

まだ生きていたことに、華はホッと胸をなで下ろした。

「――は、な…」

首を動かして華を見て、唇を動かして名前を呼んでいる母親に、華は涙を流した。
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