TWILIGHT SLIDER
欲しいものや食べたいものは、何もかも全て我慢した。

それが母親のためになるのならば、我慢なんて容易いものだった。

小学校にあがっても生活は変わらなくて、母親は馬車馬のように毎日働き続けた。

家に帰っても誰もいないのは当たり前、仕事の都合で学校行事に参加できないのは当たり前だったけど、華は何も言わなかった。

母親が忙しいのは当たり前のことだからと、華は何度も自分に言い聞かせた。

そんなある日のことだった。

あれは、小学2年生の頃だった。

「ねえねえ、これ買ってもらったの!」

クラスメイトの女の子がかわいいキャラクターのついた筆箱を自慢していた。

「いいなー」

「あたしも欲しいなー」

うっとりした目で眺めながら、彼女の友達が口々に言った。
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