TWILIGHT SLIDER
離れたところでその光景を見ていた華は両手で耳を塞ぐと、教室を飛び出した。

トイレに入ると、1人で泣いた。

「――欲しくなんかないもん…」

泣きながら、華は何度も自分に言い聞かせた。

頭に浮かぶのは、さっきまでの光景だった。

キャラクターのついた筆箱を自慢する女の子とそれをうらやましがる彼女の友達の光景が頭から離れない。

自分にはいらない、必要のないものだと、華は何度も自分に言い聞かせた。

同級生の女の子たちがいろいろな話をする。

アイドルグループの話、テレビの話、遊びに行く約束の話――それらを話題にして、彼女たちは楽しそうに話をしていた。

いつも耳に入ってくるのは笑い声だった。

それに対して華は平静を装って、興味のないふりをした。

――自分には、必要のないものだから…と。
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