TWILIGHT SLIDER
髪の先からポタポタと、雫が落ちる。

「ホンット、いい気になるんじゃないよ!」

頬に衝撃が走って、
「チョーシこいてんじゃねーよ!」

腹に痛みを覚えた。

「マジで生意気!」

躰中に、痛みが走る。

華は小さな躰を丸めて、両手で頭を抱えた。

(――痛い…)

ふいに頭の中に浮かんだのは、幼い頃の出来事だった。

父親に何度も殴られていた母親の姿が頭の中でよみがえった。

それを懸命に耐えていた母親の姿に、華は思った。

――母親は、こんな痛みを何度も味わったのだろう。

誰かに殴られると言う苦痛を母親は何度も味わい続けたのだ。

目玉を動かして、華は見あげた。

目の前にいるのは、父親と同じ形相で自分に痛みを与えている人だった。

華は、ゆっくりと目を閉じた。
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