TWILIGHT SLIDER
ある冬の日の夕方、華は走っていた。

自分のことを追いかけてくる相手から逃げていた。

西の空を見あげると、かすかにオレンジ色が残っている。

そのオレンジ色に急かされるように、華は走っているスピードをあげた。

もう少しで、後少しで家に到着する。

そう思いながら走っていたら、
「――待てよ!」

グイッと腕を引っ張られてつかまれた。

腕をつかんできた相手の顔に視線を向けると、斎藤だった。

「離して!」

華がつかんでいる手を振りほどこうとしたら、
「嫌だ!」

腕をつかむ力が強くなった。

あまりの力の強さに、華は顔をゆがめた。

「何で逃げるんだよ!」

斉藤が怒鳴るように華に言った。

その怒鳴り方が幼い頃に離れた父親とよく似ていて、華は目をそらすようにうつむいた。
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