TWILIGHT SLIDER
同時に視界がふさがれて、温かい胸が目の前にあった。

「ずっと、つらかったんだろう?

断ってるのにしつこくされたのが、嫌だったんだろう?

だから、泣いてもいいよ」

男が優しく華の頭をなでてきた。

「――ッ、くっ…」

小さな子供のように声をあげて、華は泣いた。

優しい人だった。

こんな優しい人に出会ったのは、生まれて初めてだった。

男の胸で華は泣き続けた。


泣き終えると、華は男に自宅まで送ってもらった。

「ごめんなさい、家まで送ってもらっちゃって」

「いいよ、気にしなくても。

俺が送りたかったから」

そう言って男が笑ったので、華もつられて笑った。

「じゃ、またね」

「――あの…」

帰ろうとする男を華は呼び止めた。
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