TWILIGHT SLIDER

├傷も、アザも

高校2年生の終わり頃だった。

「――お母さん…」

華は遺影の母親に向かって呼んだ。

たいたばかりの線香が漂うこの部屋にいるのは、華と八神の2人だけだった。

母親が亡くなった。

今までの苦労がたたったことが原因で、母親は病気になってしまった。

そして、1週間前にこの世を去った。

父親の暴力に耐え、必死になって自分を育ててくれた母親の姿を華は思い出した。

その母親は遺影の中で、華に向かって優しく微笑んでいる。

その微笑みに、華の目から涙がこぼれ落ちた。

「――華、大丈夫だよ」

八神が優しく華の頭をなでてきた。

「これからは僕がいるんだ。

これからはお母さんの代わりに、僕が華を守るよ」

八神が優しく微笑んだ。

「それにそんなに泣いてたら、お母さんも心配で成仏できないよ?」

からかうように八神が言ってきた。
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