TWILIGHT SLIDER
「――う、ん…」

胸に顔を埋めた華を、八神が背中を優しくなでてきた。

「華」

八神が名前を呼んだ。

「――俺と、一緒に暮らそう」


春休みになった時、華は八神のマンションに引っ越しをした。

八神の部屋は2LDKのマンションだった。

「学校から遠くなっちゃったけど、本当によかったのか?」

華の部屋になった一室にダンボールを運びながら、八神が聞いてきた。

「いいの」

箱の中の荷物を出しながら、華は笑顔で答えた。

「隆一と一緒なら、それでいいもん」

そう言った華に、
「そっか」

八神が笑った。

この時は、本当に幸せな時間が続くと思っていた。

けど、その時間は残酷なものと化した。
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