TWILIGHT SLIDER
ビクッと、華の躰が震えた。

(――この人は、誰なの…?)

目の前にいるのは、自分が知っている優しい八神じゃない。

そこにいるのは、鬼のような形相で自分を見つめる八神の顔だった。

その姿が、頭の中で父親と重なる。

「――本当に、何もない…」

そう言い返したら、頬に衝撃が走った。

「ウソをつくな!」

髪をつかまれたかと思ったら、フローリングにたたきつけられた。

「痛い!

やめて、隆一…!」

腹に衝撃が走る。

躰が痛い。

痛みが熱を持ち始める。

華は躰を丸めて、両手で頭を抱えた。

ふいに頭の中がフラッシュバックして、中学時代の記憶がよみがえった。

クラスメイトの女子たちにトイレに連れて行かれ、集団で殴られた中学時代が頭の中で流れ出した。

まさに今は、その状況だ。
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