お姫様に焦がれて
雪の特等席は、教室の奥の小さな机。人は1人しか座れないものの、図書室の中をよく知る人でなければ、見つけられない場所になっている。
図書委員の仕事は、他の生徒が入ってこない限り仕事は無い。しかも、この学校の生徒は、放課後テスト期間以外は残らないため、雪も安心して、読書に専念しようと思っていたのだ。
「早く読みたいな…。急がなくちゃ。」
頬が緩むのを抑えられず、そのまま早足で歩く。
「やっと着い………あれ?」
到着してから、いつもの自分の特等席に向かおうと視線をやると、いつもは見ないはずの物体を見る。
「あ…、あれ?」
目を隠すように覆っている前髪を掻き分け、腕で目を擦ってからもう一度見る。
「み…、見間違いじゃない…。何で??」
そこには、いつもなら見ない人影があった。
制服を見る限りでは、男の子だ。それになかなか確証をもてなかったのは、その人物が机に顔を伏せうつぶせになっていたことと、その様子にあった。
少し怯えながらも、徐々に徐々に雪は前髪を支えたまま、ゆっくりとその人物に近づいていく。
そして、心の中の声を、小さな声で呟いた。