お姫様に焦がれて
「………俺の事、怖い?」


「…………え?」


不意に彼にそんなことを聞かれ、雪はどきっとしてしまった。


「俺、こんな格好だしさ。それに、いきなり話しかけたりもしちゃったからちょっと怯えさせちゃったかなぁと思ってさ。」


「……………。」


雪は答えることができなかった。
確かに彼の容姿は、ぱっと見た瞬間驚いてしまって、怖くないといえば嘘になる。しかしそれよりも雪は別の事に気をとられていた。なので、今の質問に対してはすぐには答えられなかった。


「………何かいろいろと、ごめんな?俺、もう出てくからさ。」


少し悲しげな瞳の色を見せて、彼は立ち上がり雪の横を通った。そして、出口方へと向かう。

少しはだけたワイシャツが、前をあけている黒い学ランから見え、少し下げてあるズボンに手をつっこみ、かかとを潰した上靴を引きずりながら歩く。


ズッズッズッ―――


静かな図書館の中で、靴をする音だけが響く。
その音は少しの間教室中に響いていた。


トトトッ


しかしすぐに少しだけ走ったような音が響く。


クィッ―――


すごく小さな音であるが、その音は彼に届き、彼は顔だけ後ろに振り返った。

すると、先ほどと同じ様に、下に俯いたまま制服の裾をちょこんと引っ張っている雪の姿があった。



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