だから君に歌を
千夏がぶっきらぼうに答えると、
京平は千夏に『座れ』と言って自分の隣に座布団を持ってきた。

千夏はそこに座って両親の遺影を見た。

つい、ちょっと前まで一緒に暮らしていた両親。

二人が黒い額縁の中で微笑んでいた。

その前に学生服を着た京平と千夏が並んで座っている。

あっちの世界とこっちの世界。

『…自分のせいとか思ったりしてる?』

千夏は遺影を見つめたまま尋ねた。

『何が?』

『お父さんたちが死んだの』

『…どうだろうな。千夏が、そう言うなら、俺を責めたいならそれでもいいけどな』

京平は言って千夏の肩に手を置いた。

そんな些細な行動にさえ過剰に心臓が反応する千夏は、どうなんだろうか。

『ごめんな』

『…』

『でも、これからは俺がお前を守るから。親父達の分まで、何があっても、お前だけは守るからな』

京平は目を真っ赤にしながらそう言った。
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