だから君に歌を
「はーい、いくよー」

思わず目をつむってしまいそうな程眩しいフラッシュが千夏を照らした。

様々な機器が並ぶ中、千夏は先程から何度も衣装を変え、ヘアースタイルを変え、指示されるがままにポーズをとり続けさせられている。

今日は他のメンバーはおらず、千夏一人での撮影だ。

たかだかジャケット写真を撮るだけのために何時間もかけて、たくさんの人が集まって、

何だか千夏はお金を得るために好き勝手に都合良く動かされているただの操り人形みたいな、そんな気分にさせられた。

「はーい、じゃあちょっと休憩ー」

ようやくの掛け声に千夏は力が抜けてスタジオの隅に置かれたパイプ椅子に腰掛けた。

皆の視線から逃れられて少しほっとした。

それにしても本当にたくさん人がいる、
とスタジオで動き回るスタッフたちを眺めていると、スタジオの入口に佇んで千夏をじっと見つめている男がいることに気がついた。

向こうも千夏が気付いたことに気がついたらしく、
千夏に向かってすたすたと歩きだし、
そして千夏の真ん前まで来て立ち止まった。
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