だから君に歌を
予想だにしない返答に千夏は驚いて顔をあげた。

慎太郎は少し困ったように微笑んでいる。

「どうしよう。ライバルだな。姉ちゃんの。手強いなー」

千夏の頭には次々と疑問付が並ぶ。

「でも、まあ。ハンデは充分にあるか」

「な、に」

「じゃあさ、賭けしない?君が京平に告白して京平がそれを受け入れたら君の勝ちだから京平は君のもの。君が告白できない、かあるいわ京平がその告白を拒絶したら俺の勝ちで姉ちゃんに京平を譲る。どう?」

到底理解できない慎太郎の言葉に今度は怒りが込み上げてくる。

もはやカメラマンとマネージャーの存在など千夏も慎太郎も忘れていた。

「あれ?何?怒ってる?駄目?」

慎太郎が不思議そうな顔をする。

千夏の唇はわなわなと震えた。

「馬鹿に、してんの?」

「まさか。本気だし」

「嘘っ!馬鹿にしてんでしょ!?じゃなきゃそんな、馬鹿馬鹿しい賭なんて提案するわけない!どうせ私が負けるってわかってて言ってんでしょ!?冗談じゃないっ、誰がそんな賭けっ」

「…何、自信ないの?」

ふざけている。
絶対。

「そんなに京平って信用ないんだ。君の中で」
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