だから君に歌を
何故。

一体どこからその情報が漏れて…。

千夏が言うわけはないし、まさか、
…自分が千夏に会いに行ったりしたから?
手紙を書いたりしたから?

京平は千雪を保育園へと送り出すと、録画していたニュースを再生した。

<記者によりますと、これは千夏さんと地元が同じだという、女性からの証言であり、大変信憑性の高い記事だと思われます>

テカった顔で意気揚々と話す中年のコメンテーターの言葉にある一人の女の顔が浮かんだ。

京平はギリ、と歯を食いしばり、
港へとバイクを走らせた。

その店は相変わらず常夏の装いで、
若い女の子たちがたくさんくつろいでいた。

京平は店内に入って、
迷うことなくカウンターへと進み、店の主人である女の前に立った。

セミロングの髪の毛をゆらし、
香織が京平を振り返る。

「あら、珍しいわね。あなたが来るなんて」

香織は表情を変えることなく事もなげに言った。

「香織さん、…あんた、なのか?」

京平はバンと両手をテーブルに置いた。

白々しく香織が首を傾げて微笑む。

「何が?」

「今朝の、ニュース見た。週刊誌に、千夏と千雪のこと、言ったの、香織さんなのか?」

「あら、千雪ちゃんのこと隠してたの?ニュースになってるの?大変じゃない。でも、どうして私?私がそんなこと言うと思うの?」

さも今初めて知ったかのようなそぶりで香織は目を見開いて見せたが、
京平は確信した。

「他に千夏と千雪のこと、知ってるのは産婦人科の医者と隣のばーちゃんくらいだ。その人達がわざわざ言うわけないし、言うメリットもない。それに、」

「それに?」

「…香織さんは、千夏のこと、嫌いだったろ」

京平の言葉に香織は「ふぅん」と冷めた表情で呟いたかと思うと、
くすりと笑みを零した。

「何だ案外鈍くもないのね。京平って。ごめんね、すっごく鈍感なのかと思ってたわ。だって、ねえ?」

上目づかいで香織は京平を見つめてくる。
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