だから君に歌を
カメラマンと慎太郎の二人と料亭で別れた次の日、朝一でマネージャーと共に事務所へ向かうと、
そこには翔とプロデューサー、そして社長までもが千夏を待ち構えていた。
翔がテーブルに週刊誌を放り投げる。
見開きで千夏の記事が大きく書かれていた。
「何とか交渉してみようと努力をしたが、無理だった。今朝のニュースでも取り上げられたよ…」
心底疲れたような表情で翔が言う。
「結婚していて子供がいるというならまだしも、父親もわからない、実家に置き去りにしてきたってんじゃ、評判は最悪。フォローのしようがない。…何で今まで黙ってた?」
重い空気と共に厳しい視線が千夏に向けられている。
「あ…の、」
「バンド活動は、とりあえず休止だ。再開のめどは全く決まっていない」
プロデューサーの一言に千夏は思わずひざまづき、
テーブルに両手をついた。
「待って下さい!隠していたことは謝りますっ!でも!バンドは続けさせて下さい!お願いしますっ!」
必死の千夏に翔が「千夏、」と宥めるように呼んで、ソファから立ち上がりかける。
「何でもします!お願いします!私から歌う場所を奪わないで下さい!私、歌がなくちゃ、」
「千夏!やめろ!」
立ち上がった翔が怒鳴って千夏の腕をひっぱり、無理矢理立ち上がらせた。
「もう決まったことだし、どっちみち今のお前じゃステージに立つことは無理だ。イメージが悪すぎる」
「…でも、」
歌う価値まで奪われたら、行き場がないの。
居場所がないの。
唯一残された価値まで、
奪わないで。
お願い。
もうあの島へは帰れないの…。
そこには翔とプロデューサー、そして社長までもが千夏を待ち構えていた。
翔がテーブルに週刊誌を放り投げる。
見開きで千夏の記事が大きく書かれていた。
「何とか交渉してみようと努力をしたが、無理だった。今朝のニュースでも取り上げられたよ…」
心底疲れたような表情で翔が言う。
「結婚していて子供がいるというならまだしも、父親もわからない、実家に置き去りにしてきたってんじゃ、評判は最悪。フォローのしようがない。…何で今まで黙ってた?」
重い空気と共に厳しい視線が千夏に向けられている。
「あ…の、」
「バンド活動は、とりあえず休止だ。再開のめどは全く決まっていない」
プロデューサーの一言に千夏は思わずひざまづき、
テーブルに両手をついた。
「待って下さい!隠していたことは謝りますっ!でも!バンドは続けさせて下さい!お願いしますっ!」
必死の千夏に翔が「千夏、」と宥めるように呼んで、ソファから立ち上がりかける。
「何でもします!お願いします!私から歌う場所を奪わないで下さい!私、歌がなくちゃ、」
「千夏!やめろ!」
立ち上がった翔が怒鳴って千夏の腕をひっぱり、無理矢理立ち上がらせた。
「もう決まったことだし、どっちみち今のお前じゃステージに立つことは無理だ。イメージが悪すぎる」
「…でも、」
歌う価値まで奪われたら、行き場がないの。
居場所がないの。
唯一残された価値まで、
奪わないで。
お願い。
もうあの島へは帰れないの…。