だから君に歌を
「千夏。夕飯できたぞ」

部屋の扉が二回ノックされて京平の声が聞こえた。

千夏はそれを無視する。

しばらくするとカタリ、と音がした。

「ここに置いとくから、食べろよ」

扉一枚隔てた向こうの京平はどんな顔をしているだろう。

千夏が突然変わったことを訝しんでいるだろうか。

急に京平を邪険に扱い、家に近寄らなくなった千夏をどう思っているのだろうか。

両親の死のことで千夏が京平を恨んでいると、
そう勘違いしていてくれると助かる。
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