だから君に歌を
慎太郎の姉はちらりとフロントミラー越しに千夏をもう一度見つめ、
恥ずかしそうに笑うと、
「初めまして。慎太郎の姉の亜紀です」
と言い、車を発進させた。
「姉ちゃんもギター弾くんだよ。歌も上手いし」
慎太郎は自慢げに千夏を振り返って言う。
「…へぇ」
「ちょっと慎太郎!プロの人に向かってやめてよ恥ずかしいっ」
「いいじゃん、別にー」
なんだか急に慎太郎の喋り方が変わって、
いかにも無邪気で可愛い弟ぶったキャラに豹変した。
この猫っかぶりが、
と、千夏は心の中で毒づく。
千夏達を乗せた亜紀の車は空港を出てバイパスを飛ばし、
途中で山の方へと逸れる道に入ったかと思うと、
どんどんと細い道を進み、
やがて風情のある温泉街へと到着した。
年期の入った大きな旅館の向かいにある駐車場に車を止めると亜紀は千夏に、
「ここがうちの旅館です」
と言って車を降りた。
恥ずかしそうに笑うと、
「初めまして。慎太郎の姉の亜紀です」
と言い、車を発進させた。
「姉ちゃんもギター弾くんだよ。歌も上手いし」
慎太郎は自慢げに千夏を振り返って言う。
「…へぇ」
「ちょっと慎太郎!プロの人に向かってやめてよ恥ずかしいっ」
「いいじゃん、別にー」
なんだか急に慎太郎の喋り方が変わって、
いかにも無邪気で可愛い弟ぶったキャラに豹変した。
この猫っかぶりが、
と、千夏は心の中で毒づく。
千夏達を乗せた亜紀の車は空港を出てバイパスを飛ばし、
途中で山の方へと逸れる道に入ったかと思うと、
どんどんと細い道を進み、
やがて風情のある温泉街へと到着した。
年期の入った大きな旅館の向かいにある駐車場に車を止めると亜紀は千夏に、
「ここがうちの旅館です」
と言って車を降りた。