だから君に歌を
千夏は京平が風呂に入ったのを見計らって部屋の扉を開いた。

扉の前にはおにぎりが二つと、きんぴら、焼き魚、そしておみそ汁用のお椀の横にメモがあった。

千夏はそのメモを手に取って目を通した。

<みそ汁は鍋に入っているから、温めて食え。それから、さっきは怒鳴って悪かった。ちゃんとこれからのこと、話をしよう。お兄ちゃんより>

千夏はメモを読み終えるなり直ぐさまそれを握り潰してごみ箱に捨てた。

「だから、そーゆーのがうざいんだって…」

京平は千夏が何をしたって結局は受け入れようとする。

千夏の味方で、よき理解者であろうとするのだ。

千夏が食べ終えた食器を洗っていると、京平がパンツ一枚の姿で風呂から上がって来た。

それを見た千夏は思わず洗いかけの茶碗を手から滑らせて落としてしまった。

ガシャン!
と、派手な音をたてて茶碗が落ちる。

「おい千夏!大丈夫か!?」

その音を聞き付けた京平が千夏の元へ駆け寄って来た。
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