だから君に歌を
第３章

１会いたい

少しおかしいな、
と思ったのは昨晩千雪が大好きなアニメが始まっても寝室から出てこなかったのがきっかけだった。

「ちぃ？まだ寝てんのか？保育園遅刻するぞ」

いつもの時間になってもなかなか起きてこない千雪に朝食を作り終えた京平は寝室を覗き込んだ。

パジャマ姿の千雪が何だか浮かない顔でベッドの上にちょこんと座っていた。

「どした？今日はお遊戯会の練習だろ？」

京平の問いに千雪はふるふると首を横に振った。

「具合でも悪いのか？」

またもや千雪が首を振る。

「…ちぃのママ、ワルイオンナなの？サイテイなの？」

俯いた千雪がぼそぼそと消え入るような声で言った。

「…誰がそんなこと言ったんだ？」

「ケイゴくんとマナちゃん。テレビでちぃのママのこといっぱい言われてるって本当？」

上を向いた千雪の瞳にはたっぷりと涙が今にも溢れんばかりに溜められていた。

千雪には千夏のニュースを見せないように細心の注意を払っていた京平だったが、
さすがに保育園での話題にまで考えが及ばなかった。

自分の配慮の足りなさに腹が立つ。
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