だから君に歌を
「ちぃ、ちぃのママは最低なんかじゃ、ないぞ。ちぃのママはな、寂しがりで本当は誰よりも繊細でな。だからちょっと今は家に帰って来れないだけでな、悪い女なんかじゃないし、とっても綺麗で歌が上手なんだ!」

京平が千雪の両肩をがっしり掴んで力説すると、
千雪の瞳が輝いた。

「…本当?」

「ああ、本当だ」

「いつか、ママに会える?ちぃね、ママに会いたい」

やはり千雪にはまだまだ母親という存在が必要だったのだろう。

今まで一度もそんなことを口にせず、
寂しいそぶりも見せなかった千雪だが、
ずっと我慢していただけだったのだ。

京平の愛情が足りなかったとか、
そういうわけではない。
そうじゃない。

でも、本当の母を求める。

その気持ちは両親を亡くした京平もよく知るものだし、千雪ほど幼ければ尚更だ。
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