だから君に歌を
やっぱり、この語尾の感じとか、
似てる。

「ねぇ、ここって−−県の隣だよね、確か」

千夏はかなり前に見たニュースの情報を記憶の中から懸命に再生させた。

「え、ああ。うん、そうだよ。ここは−−県寄りだから30分くらいで行けるかな」

やはり、
テレビニュースでは中原皐月の事件は−−県で起きたと報道され、
中原皐月の実家はその隣のこの県だと、
そう言われていた。

つまり、隆のいる場所だった。

できすぎの偶然に千夏は静かな感動を覚えた。

そうか、
ここが、彼の…

「ねぇ」

「ん?」

「聞かせてよあんたの曲」

千夏が言うと亜紀は驚いて焦ったように首を振った。

「そんなっ、プロの人に聞かせるような代物じゃないし!」

「いいよ、別に。暇つぶしに来てくれたんでしょ?だったら聞かせて」

「でも…」

「お願い、聞かせるより聞きたい気分なの」

千夏は窓の外の雪景色を見ながら言った。

そういえばもうすぐ誕生日だった。

千夏と、
そして、千夏の小さな女の子の。

赤ん坊の顔しか知らないけれど。
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