だから君に歌を
小さい頃からずっと怖かったことがある。

それは、
京平に本気で好きな人が出来ること。

「千夏、俺さ彼女できた」

そう言って嬉しそうに笑う京平の夢を見ては、
いつも叫びながら目を覚ます。

カーテンを隔てた隣に京平の寝息を認め、
すぐに夢だとわかり、
ほっとしてまた眠りにつく、ということを何度繰り返しただろう。

どんなに京平を好きになったって、
報われやしないのに。

それどころか、
この気持ちを知られてしまったらきっと京平は、
千夏を気持ち悪いと思うのに。

嫌われる。

そんなの、
嫌。

京平に嫌われたら
きっと私、

生きていけない。

だから、
隠してたの、ずっと。
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