だから君に歌を
嫌われるくらいなら、
傍にいられない方がまし。

そのためならなんだって捨てられる。

島での生活も、
赤ちゃんも。

いらない。

「千夏…」

京平の声が聞こえた。

また夢だ。

フィルターがかかったみたいに、
真っ暗な中にぼんやりと京平の声が聞こえる。

「千夏、俺さ、俺の好きな人はさ」

まただ、
またこの夢。

嫌だ。聞きたくないよ。

「俺、亜紀ちゃんが好きなんだ。だから結婚することにした。だからもう、千夏と千雪のこと守ってやれないんだ」

なに、それ。
嫌だよ。
なんで急にそんなこと言うの?やめてよ。

「それに、俺達兄妹なのに千夏が俺を好きだなんて、異常だ。理解できないし気持ち悪い。さよなら」

嫌っ!
言わないで、そんなことっ。
謝るから、
好きだなんて嘘だから、
もう言わないからそんなこと。

だからお願い嫌いにならないで!

「京平!」
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