だから君に歌を
暗闇で必死に手を伸ばすと、がっしりと大きくて暖かい手が千夏の手を取った。

「千夏っ」

はっとして目が覚めた。

眩しい光りに目を細くする。まだ握られた手の感触は消えない。

しばらく握られていない方の手の甲で光りを避けていると、だんだんと目が慣れて来て千夏はようやく目をきちんと開いた。

自分の手がしっかりと日に焼けた手に握られているのが目に入る。

手、腕、肩、首、と視線を移して、
最後に顔。

「千夏」

今にも泣き出しそうな顔がそこにあった。

とっさに千夏は手を引っ込めようとする。
が、
強い力で引き戻された。

「離してっ、」

頭が混乱して千夏は思いきり暴れた。

どうして、
どうしているの。

けれどそんな千夏をものともせず、
絶対に手を離そうとしないどころか、
もう片方の腕ががっしりと千夏の肩を捉えた。

「やだ、離して触らないでよ京平っ!」

「千夏!」
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