だから君に歌を
まだ幼いだろう男の子の声。

続いて<皐月、あ。電話中?>という、男の声。

明らかだった。

隆と皐月に起こったことなど、その二つの声だけで充分すぎるくらいに予想がついた。

「あの…」

<はい?>

「いえ、隆さんは、あなたのことを…」

賭に出ようと思った。

慎太郎との賭では無い。
自分との賭。

隆の気持ちを知った上で中原皐月が<ママ>でいて、誰か違う男といて、
隆が刑務所にいる、

そうだったなら、
それは千夏の未来でもある気がした。

「隆さんはあなたを愛してました。すごく。すごく、妹なんかとしてじゃなくて…」

<…知って、るんですか?あなた、一体…>

中原皐月は隆の気持ちにではなく、
千夏がそれを知っているということに驚いたようだった。
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