だから君に歌を
明け方になってようやく京平は千雪のことを思い出した。

「…ちぃ」

千雪のことをすっかり忘れていた京平は、そのまま家を飛び出して来たのだった。

保育園に残された千雪はどうしただろうか。

完全看護のため、一旦慎太郎のいる宮崎旅館を訪ねて泊めてもらっていた京平は慌てて沖縄へと電話をかけた。

日頃から世話になっている隣の家の老婆であり、慎太郎たちの祖母である人の番号だ。

<もしもし>

「あ、ばーちゃん?俺、京平だけど、千雪どうしてるかわかるか!?」

いくら慌てていたからとはいえ、子供を放ったらかしにするなんて、

<ちぃちゃんなら保育園から連絡があって、うちで預かってるよ>

「え、本当か!?」

<ああ、安心しな。それよりあんたがちぃちゃんを放ったらかしだなんて一体、今どこにいるんだい?>

「…ちょっと、しばらく帰れない。理由は、言えない。でも帰るから、ちぃのこと頼んでもいいか?」

最近元気のない千雪のことを考えると可哀相だが、
致し方ない。

幸いばーちゃんは快く引き受けてくれた。

それから三日三晩、千夏の意識は戻らなかった。
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