だから君に歌を

3共鳴した心

彼に出会ったのはほんの二ヶ月くらい前のこと。

千夏は毎晩街に出てストリートライブを行うことを日課にしていた。

といっても、
他に仲間がいるわけでもなく、
ただ一人、
ギターを抱えて地面に座り込み、弾き語りをするだけなのだけれど。

千夏はその日も同じ様に下宿先の家を抜け出して街へと向かった。

いつもだいたい同じような場所に座る。

千夏はデニムにTシャツというラフな恰好で、地面に座った。

ギターケースの上には灰皿を置く。

ほとんどの人は、立ち止まって千夏の歌を聞く、
なんてことはせずに、
通り過ぎていく。

けれどたまに物好きな人間が足を止め、
千夏の灰皿の中にお金をほうり込んでいってくれるのだ。
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