だから君に歌を
京平はオムライスを作る時、何かのサービスのつもりか、ケチャップで下手くそな絵を書いていた。
化け物にしか見えない猫だとか、
歪んだハートだとか、
ふざけているのではなく、いたって真面目にやっているのだからどうしようもない。
千夏は自分の前に次々と置かれていくオムライスを見て首を捻った。
器の数を数えてみる。
「ねぇ、多くない?」
最後の一つを作り終えた亜紀が千夏の隣にしゃがみ込む。
「うん。お客さんが来るから。お母さんたちには席外してもらうから安心して」
「…」
余分なオムライスの数は2つ。
「ほら、ケチャップ乗せてあげて?ちぃちゃんの大好物なんだって、オムライス」
京平は千夏の怪我の治療が落ち着くと、沖縄へと帰った。
一人、置いてきた千雪のために。
「…なんで、黙ってたのよ」
「え、あー。隠してたわけじゃないの、私もさっき京平に聞いて…」
「…」
どんな顔をして会えばいいのかわからなかった。
千夏はケチャップに伸ばしかけた手をぐっと握りこぶしにする。
自分のために利用して捨てて、
ずっと放ったらかしにしていた、
母親らしい気持ちを向けたことなど皆無に等しいのに。
化け物にしか見えない猫だとか、
歪んだハートだとか、
ふざけているのではなく、いたって真面目にやっているのだからどうしようもない。
千夏は自分の前に次々と置かれていくオムライスを見て首を捻った。
器の数を数えてみる。
「ねぇ、多くない?」
最後の一つを作り終えた亜紀が千夏の隣にしゃがみ込む。
「うん。お客さんが来るから。お母さんたちには席外してもらうから安心して」
「…」
余分なオムライスの数は2つ。
「ほら、ケチャップ乗せてあげて?ちぃちゃんの大好物なんだって、オムライス」
京平は千夏の怪我の治療が落ち着くと、沖縄へと帰った。
一人、置いてきた千雪のために。
「…なんで、黙ってたのよ」
「え、あー。隠してたわけじゃないの、私もさっき京平に聞いて…」
「…」
どんな顔をして会えばいいのかわからなかった。
千夏はケチャップに伸ばしかけた手をぐっと握りこぶしにする。
自分のために利用して捨てて、
ずっと放ったらかしにしていた、
母親らしい気持ちを向けたことなど皆無に等しいのに。