だから君に歌を
「…」

「だから、このこが産まれた。隆に、似てるでしょ」

千夏は初めてまともに中原皐月と目を合わせて、彼女の目が赤いことに気がついた。

「隆の気持ちを知った時、気持ち悪いと思った?」

「…」

中原皐月は黙ってその瞳を揺らす。

「どう思った?」

「…私、隆兄を苦しめてることにずっと、気がつかなくて、どうしていいか、わからなくて…隆兄に甘えてばっかりで、いっぱい助けてもらったのに、隆兄を拒絶した…」

「そう…」

中原皐月は全身で自分を責めているように見えた。

「この娘、隆兄に…本当に、そっくり」

言って中原皐月は再び千雪を見つめる。

千雪はわけがわからず未だキョトンと突っ立っているだけで、
誰?とでも言うように千雪は千夏を見上げた。

「千の雪、」

「え?」

「千の雪で、千雪です。握手、してあげて」

千夏はしゃがんで千雪に手を差し出すように言った。

千雪は中原皐月に向けて小さな手を差し出しにっこりと微笑む。

中原皐月の震える手がそれを握り締めた。
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