だから君に歌を
昨日、
隆は千夏に妹のことが女として好きだと打ち明けた。
おかしいとわかっているけれど、
やめられない。

でも、皐月を傷つけたくはないから、
だからずっと片思いのまま、
この気持ちは胸にしまっておくのだと。

「シャワー浴びる?」

「…うん」

千夏は自分の服を探した。

それに気がついた隆が千夏にシーツを渡し、
それを被ってバスルームまで行けばいいと言ってくれた。

熱めのお湯を頭から浴びながら京平のことを考えた。

京平は絶対に隆みたいに千夏に触れたりはしない。

しないだけじゃなく、
考えもしないし、
思いつきもしない。

真っ当な人間だ。

頭から足元へと流れて行くお湯が、
体の汚れと共に、
この醜い心の汚れも流してくれたら良いのに。

排水溝へと流れて行くお湯を見つめながら千夏は虚しい気持ちになった。

けれど隆に抱かれたことには何の後悔もなかった。

むしろ心の傷が和らいだと言っていい。
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