だから君に歌を
千夏はそんな京平に呆れてしまった。

子供が生まれた日には、
倒れるんじゃないだろうか。

一般の病院の診察室とは違い、ここの診察室はピンクなどの優しい色で統一されていた。

一通りの診察を終えて、先生の前に置かれた二つの椅子に千夏と京平が座る。

「順調ですよ。これからも体調には気をつけてくださいね」

優しそうな中年の女の先生が言うと、
なぜか京平が「はい!」と勢いよく返事をした。

「京平が気をつけてどーすんの。馬鹿」

千夏が突っ込みをいれると、京平は真面目な顔で

「何言ってんだ!お前の体調管理は俺の仕事だろ」

と自信満々に言ったので、先生は微笑ましげに千夏と京平を見つめて

「素敵な旦那様ね」

と言った。

先生のとんでもない勘違いにさすがに千夏も京平も呆気に取られてしまった。

そんな勘違いが本当ならどんなにか罪深く、
そして幸福だろうか。

京平は先生の勘違いを軽く笑い話にしていたけれど、
千夏にはそんな風に笑って話すことなどできそうになかった。
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