だから君に歌を
千夏はよく知っている。

京平はいつだって、
諦めずに我が儘を言い続ければ最後には絶対千夏の言うことを聞いてくれるのだということを。

千夏の言うことなら何だって聞いてくれるのだ。

それが千夏の優越感を満たしてくれる。

いつだってお姫様みたいな気分になれた。

しかし、
意気揚々と京平についていったのはいいものの、
千夏は15分で飽きてしまった。

小さな原っぱで馬鹿みたいにボールを打っては追いかけ回している京平たちを、
千夏は少し離れた所から見ていた。

両手で顔を挟んで口を尖らせる。

この島には同じ年頃の子供はあまりいない。

だから京平たちはさっきからずっと三人で野球をしている。

テレビで見る野球はもっとずっとたくさんの人達でやっていた。

だから京平たちがやっているのは野球ではない。

今は8月。
外はすごく暑いし、
喉が渇くし、
第一ちっとも楽しくない。

京平はどうしてあんなことが楽しいのだろう。
< 40 / 189 >

この作品をシェア

pagetop