だから君に歌を
京平はスライディングをして、顔中泥だらけになって、
楽しそうに笑っていた。

千夏が我慢の限界に近づいてきて、
辺りを見回していると、
ふと、
一人の男の子の姿が目についた。

見たことのない顔。

その男の子は、千夏と同じように、
一人ぼっちでつまらなそうな顔をして離れた所から野球をしている京平たちを見ていた。

『ねぇ、何してるの?』

飽き飽きしていた千夏はその男の子に声をかけた。

近くで見ると、
男の子は千夏よりずっと小さかった。

『一人?名前は?』

突然声をかけられてびっくりしているのか、男の子は目を丸くして千夏を見上げていた。

『しゃべれないの?聞いてるのに、答えなよ』

千夏が強く言うと、男の子は眉をしかめて、

『しんたろ、…ひとり』

と答えた。

『ふーん。しんたろってゆーんだ。変な名前っ。どっから来たの?』

『ばーちゃんち』

『何で一人なの?』

『あきちゃん、ねつでた。だからひとり』
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