だから君に歌を
千夏は小さな男の子相手に質問攻め。

何でも答えるしんたろは、そう言って少し寂しそうな顔をした。

『あきちゃんって誰?』

『ぼくのおねーちゃん』

千夏はしんたろに少しだけ共感した。
なんとなく、この子と自分が似ていると思った。

『しんたろはあきちゃんのこと、好きなの?』

絶対の確信のようなものを持って千夏が尋ねると、
思った通りしんたろは、こくりと頷いた。

『私のお兄ちゃんね、あれ。あそこでバット持ってる1番動いてるあれだよ。わかる?』

千夏は京平を指さした。

『私もお兄ちゃん大好きだから結婚するんだよ』

千夏は得意げに言って見せた。

もっとずっと小さい頃は何も考えずに言っていた言葉。
でもそれは、
だんだんと言いにくくなっていった。

言っちゃだめなこと。
そう、千夏は薄々気付き始めていた。

友達は皆他人の男の子の話ばかりする。
千夏が京平のことを言うと、『違う』と言われる。

でもしんたろはまだ小さいから言っても大丈夫な気がした。
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