だから君に歌を
『なんだよ。どうした?何があったんだよ?』

誰よりも近くにいるのに。

京平も、違うって言う?
千夏と結婚してくれないって言う?

『やだぁ、もう。帰るー』

小さな赤ちゃんみたいに泣きながら千夏は京平に抱き着いた。

しんたろは立ち上がってお尻を掃うとどこかへ走って行ってしまった。

『千夏?飽きたのか?どっか痛いのか?』

激しく肩を震わせて泣きじゃくる千夏を京平は心配そうに覗き込んだ。

『だから来るなって言ったろ?』

『帰る。おんぶ、して』

とんでもない我が儘。

『えー。千夏歩けるだろ?おんぶなんて、赤ちゃんみたいで恥ずかしいぞ』

『歩けない!して!』

だって、
もう少ししたら京平は誰かに取られてしまうから。

今はどんな我が儘でも許してくれる京平がいい。

京平は嫌々ながらも千夏に背を向けてしゃがんだ。

千夏はすかさず京平の首に腕を回す。
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