だから君に歌を
「京平、私がいなくなったら、どうする？」

着々と両親の店を再オープンに向けて準備をしていってる京平の背中に千夏は問い掛けた。

カウンターにいた京平が振り返る。

「どうって、」

京平はホッとするかもしれない。
重荷が消えて、肩が軽くなるかもしれない。

いい加減我が儘な千夏に振り回されるのにうんざりしているのかも。

「探すだろ。探して、待つよ。戻ってくんのを。戻って来るだろ？」

全く予想外の回答を京平は平気な顔で言ってのけた。

鼻唄を歌いながら京平はまた作業を開始した。

千夏は絶句する。

どこまで馬鹿で愚かな兄なんだろう。

いや、
本当に愚かで馬鹿なピエロは千夏だけれど。

でも、
そんな京平に救われているのは事実。
< 46 / 189 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop