だから君に歌を
面白いくらいに京平の動きが止まった。
ちょうど、パソコンの画面がフリーズしたみたいに。

額から汗が噴き出る。

暑い。

家の外で兄妹が向かい合ったままじっとしている姿は奇妙だった。

「に、にん…?」

馬鹿みたいに黙り続けた後、京平がようやく出した声は壊れたラジオみたいだった。

「聞こえなかった?妊娠」

「は…、冗談、」

「本当だってば」

千夏は踵を返して家の中へと戻った。
つけっぱなしのテレビはいつの間にかドロドロした昼ドラに変わっていた。

畳みに俯せになり、テレビを見ていると、ふらふらと京平が千夏の元へやってくる。

千夏はわざと無視してテレビから視線を外さない。

「誰に、やられた?」

千夏はうんざりした。

「無理矢理やられたんだろ!?言えよ誰だ!?ちくしょうっ!殺してやるっ!」

京平は激怒して畳みを殴り付けた。

馬鹿馬鹿しい。

「じゃなきゃお前が妊娠なんてそんな。するわけねぇ!おいっ、一体誰なんだよっ!?」
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