だから君に歌を
千夏が振り返るとそこには大きな紙袋を抱えた香織がいた。

「やっぱり千夏ちゃんだ。覚えてる?私、京平の、」

千夏は話しかけてくる香織を無視して手帳を鞄に戻し、歩き出した。

「待ってよねぇ!私、千夏ちゃんに話しがあるの」

臨月のお腹を抱えて歩く千夏に香織は簡単に追い付いてくる。

千夏はすぐにぴたりと足を止めて香織を見た。

「立ち話もなんだから、うちの店、寄ってかない?」

香織は千夏の腹を見てそう指差した。

道を挟んだすぐ向かい側に香織の店、little Cafeがあった。
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