だから君に歌を
「それで、これからもそうやってずっと、京平を縛り付けるつもりなの?それって…どうなのかしらね?」

ゆっくりと話す香織に千夏の背筋が冷えた。

千夏はこの香織という女を侮っていた。

なかなか気の抜けない相手かもしれない。

「私はね。京平がたった一人の家族を、亡くなったご両親の分まで大切にしたいって気持ちは素晴らしいと思うわ。京平はそういう人だから。誰にでも優しくて、暖かい人。ただ、問題なのは千夏ちゃんよね」

「何、が言いたいの…」

「千夏ちゃんはそんな京平の優しさを利用して、京平を、京平から自由を奪って、それで満足してるんじゃないの?それって京平のこと、ちゃんと考えてるのかしらね?大事にしてるって言える?」

なにを、
わかったようなこと。

何も知らない癖に。

どんなに千夏が苦しんでいるかなんて、
わからないくせに。

少しくらい京平に何かを聞いたくらいで、

「わかったようなこと言わないでよっ」

千夏は香織を睨み付けた。
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